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多くの住宅ローンをひとまとめにして対象資産を構成するプーリングの手法は役に立ちます。
個々のローンに関わる問題をある程度解消し構成したプールとしての対象資産のリスク特性を取引可能なものにする役割を果たすのです。
この点を例で説明しましょう。
単純化のため同一条件の住宅ローンを抱えるAさんとBさんがいるものとしましょう。
二人とも50%の確率で満額返済できますが50%の確率で全く返済できなくなるとします。
ただし返済金不払いは個人的な事情によってお互いに無関係に(確率の用語を使えば独立に)起きるものとします。
ここで住宅ローンの返済金をもとに証券化の対象資産を構成することを考えましょう。
まずAさんの返済金だけを対象資産とするとどうなるでしょうか。
この場合対象資産のキャッシュフローが抱えるリスクはAさんから返済金の支払いがなされるかどうか五分五分というものです。
すなわち50%の確率で返済金が満額支払われ50%の確率で返済金がゼロとなります(Bさんの返済金だけを対象資産とする場合も同様です)。
ではAさんとBさんのローンの返済金をひとまとめにしてプールを作りそのプールを対象資産とするとどうでしょうか。
この場合全く支払いが行われない可能性はAさんとBさんが同時に不払いを起こす確率すなわち25%に減少します。
一方満額支払われる確率も25%に減ってしまいます。
しかしながら50%の確率でAさんかBさんのどちらか一方から支払いがあります。
返済者一人あたりの金額で考えればこのローンのプールからは25%の確率で満額50%の確率で半額払われることになるのです。
結果として返済者一人あたりに生み出されるキャッシュフローの変動は二人の返済金のプールを対象資産とする場合の方がどちらか一人だけの返済金を対象資産とする場合よりも小さくなります。
より現実的には二人ではなくもっと多くの人々の住宅ローンの返済金がプールされ対象資産が構成されることになります。
するといわゆる「大数の法則」によって返済者一人あたりに対象資産が支払う金額はより高い確率で平均返済額の場合の半額(1/2)されるローンの数が多ければ多いほどこの傾向は強まります。
この結果プールが生み出すキャッシュフローの変動もますます小さくなるのです。
このようにプーリングを行うことで個々の住宅ローンに関わる個別のリスクによって起きる変動は全体としてならされプール全体への影響は無視しうる程小さくできます。
プールとして対象資産を構成することで個別リスクによる無用な変動を分散させプール全体に平均的なリスクによる変動だけを残す。
これがプーリングによるリスクのコントロールすなわち個別リスクの分散効果なのです。
金融に詳しい読者ならばプーリングで利用されている個別リスクの分散効果がポートフォリオ理論における「分散投資の効果」と同じ原理で起きていることにもうお気づきでしょう。
それほどこの手法は金融活動の様々な場面で役に立つ一般性を持ちまたそれゆえに証券化の全般においても広く利用されています。
例えば住宅ローンの代わりに自動車ローンやクレジットカードローンのプールを作ったらどうでしょうか。
住宅が自動車に置き換わっただけですから同じ原理で個別リスクを分散できるはずです。
プーリングの手法の有効性は明らかです。
後に説明しますがこのように自動車ローンやクレジットカードの返済金をプールすることで個別のリスクによる変動をならしそのプールを対象資産に証券化を行うのが自動車ローンやクレジットカードローンのABS(資産担保証券)となります。
住宅ローンの代わりに一般の貸し出し債権をプールして対象資産としたらどうでしょうか。
プーリングによって個別の貸し出しの個別リスクは分散されそれらの貸し出しの価値を全体として変動させる平均的なリスクだけが残ります。
他方様々な会社が発行する社債をプールして対象資産としたらどうでしょうか。
やはりプーリングによって個別の社債の個別リスクは分散されそれら社債全体の価値の変動を支配する平均的なリスクだけが残ります。
この原理を利用して一般の貸し出しのプールを対象資産として証券化を行うのが後に説明するCLO、数々の社債の平均的リスクだけを抱えたプールを対象資産として証券化するのがCBO(社債担保証券)に他なりません。
このようにプーリングは対象資産を構成する証券化の第一段階において個別リスクを分散して平均的なリスクだけを残すことで対象資産のリスクのコントロールを可能にする有用な手法なのです。
さてプーリングは個別リスクを減らすには有効な手法ですがプール全体が平均的に変動するリスクは消せません。
単純にローンのプールの例で考えてもプールの中に入っている債務者の多くが一斉に同じ返済行動をとればその行動がプール全体の動きとなることはすぐにわかるでしょう。
住宅ローンの証券化の場合期限前償還(プリペイメント)がこのようなプールに残って消せない平均的リスクの重要な例となります。
期限前償還(プリペイメント)とはローンを計画よりも早く返済してしまうことです。
期限前償還には様々な理由が考えられますが主な原因の一つに金利水準の低下に伴う借り換え行動があります。
市場金利が低下して新たな借り入れに支払う金利が当初に設定した住宅ローンの返済金利よりも低くなった場合安い金利で借りてローンを返済してしまう方が借り手にとっては将来の金利負担の分だけ得になります。
そこで新たに借りて前のローンを返すことで住宅ローンを借り換えてしまうわけです。
金利の変化は借り手全員に共通しますから借り換えを行う動機も借り手全員に共通します。
このためローンのプールに入れられている多くの借り手が同じ時期に期限前償還をする事態となるのです。
このような期限前償還は貸し手にとっては返済金を受け取るタイミングに関するリスクとなります。
当初の計画では長期にわたって予定された金額の元利返済金を受け取り続けるはずだったものがある時点で突然ひとまとめに返済がなされてしまうからです。
さらに将来の金利収入も期限前償還によって減ってしまいます。
パススルーMBSの場合このような住宅ローンの返済金のプールをそのままMRSの支払いとするため期限前償還は大きな問題を引き起こします。
そもそも住宅ローンの返済金は長期(例えば30年)にわたって支払われる予定のものなのでパススルーMBSの購入者も長期の目標を持つ投資家に限られてしまいます。
ところが期限前償還リスクのため場合によってはパススルーMBSからの実際の支払いが中期もしくは短期で尽きてしまい長期の投資目標に役立たなくなってしまうリスクもあります。
これではパススルーMBSは誰にも買ってもらえません。
このような問題を回避し証券化金融商品への需要を喚起するためには期限前償還リスクをコントロールして投資家の需要に合致したリスク特性を持つ証券を作り出す必要があります。
これを初めて実現したのが1983年に米国の政府系金融機関のFHLMC(フレディーマック)によって開発されたCMO(モーゲージ証券担保債務証書)です。
CMOがパススルーMBSと違って特徴的な点はそのキャッシュフローをそのまま発行する証券の支払い金とすることをしないで異なる投資家の異なる需要に合致するよう異なるキャッシュフローを持つ異なる証券に分解・細分化して切り売りすることです。
この仕組みを使ってCMOは期限前償還リスクをコントロールするのです。
より具体的にはこうです。

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